慢性硬膜下血腫は、診断がつきさえすれば簡単な手術で治すことのできる病気です。
頭部の比較的軽い外傷後1~3ヶ月してから症状を出すことがあるので注意が必要です。
慢性硬膜下血腫という病名は、一般的にあまりなじみのない病名かもしれませんが、脳外科領域では比較的よく見られ、特に高齢者に多い病気です。
この病気は診断が容易で、比較的簡単な手術で治すことができる一方で、痴呆などと間違われて診断がつかなければ長期に放置される可能性もあり、一般の方も頭の片隅におかれてもよい病気だと思います。
この病名はまず、「慢性」と言うのは「急性」に対する言葉で症状がゆっくりと長い経過をとって発現するという意味です。
次に「硬膜下」というのは、血液が溜まる場所の事を指しています。
硬膜というのは、脳の周りにある固い膜の事で、頭蓋骨の内側にあり、硬膜下というのは、その硬膜と脳の間の隙間ということになります。
「血腫」というのは、出血した血液の固まりの事です。
つまり、この病名が示しているのは、「硬膜下に徐々に出血が溜まってくる病気」と言う事です。
さて、そのように出血を起こしてくる原因となるのは、頭部の外傷です。
ただし、外傷と言っても、それほど激しいケガであることはむしろ少なく、柱に頭をぶつけたとか、尻もちをついた等といった、ごく軽いものが原因であることが多く、原因となった外傷が特定できないことも多いのです。
また、慢性という病名の通り、普通は外傷が起きてから、徐々に出血が溜まってきて、1~2ヵ月たってから症状を出してくる事が多いのです。
よって、出血と書きましたが、これは普通に言う出血とはかなり異なる病態である事がわかります。
普通に出血と言うと、破れた血管から血液が直接外に出てくる状態の事ですが、慢性硬膜下血腫の場合は、外傷後にできた硬膜下の被膜に、血管の新生が起こり、その血管から血液成分が、壁を漏れ出てくるような状態と考えられています。
症状は、頭痛や吐き気、さらに歩行障害等が初発症状として多いものですが、高齢者の場合には、痴呆の症状で発症することもあり、放置される場合もあるので注意が必要です。
さらに進行すれば、手足の麻痺や意識障害をきたし、最悪の場合には死亡する可能性もあります。
診断は、頭部CT検査や脳MRI検査で行います。
専門家がみれば、まず見逃すことはありませんが、慣れていないと微妙なケースを見逃す可能性はあります
軽い場合は経過観察で自然治癒することもありますが、症状がある場合には手術が必要になります。
手術は局所麻酔で頭皮を4㎝程切開し、直下の頭蓋骨に径1㎝程の穴をあけます。
血腫の被膜をあけ、貯留した液体状の血腫を洗い流し、生理食塩水で血腫腔を洗浄します。
30分程度で終わる手術です。
ほとんどのケースで、手術は著効を呈し、直後から症状は改善し、ほぼ病前の状態まで回復します。